【社長ブログ】マッチングの成否は「実績」よりも「意思」が決め手
JOPS社長ブログ
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第4話 大学を「企業のトモダチ」にしたいなぁ(4回連載)
第3回 マッチングの成否は「実績」よりも「意思」が決め手
背景4
私は前職で、大学と共同研究をした経験があります。
大学をぎりぎりの単位で卒業した私は「大学の先生は雲の上の存在」だと思い、40代までは業務課題を大学の先生に相談しようなどと考えたこともありませんでした。
そんな私でも、企業の人事異動の中で、こともあろうに研究所長の職位が発令され、自社単独だけではなく、他企業・団体とも共同で研究を推進していく立場になってしまいました。
継続研究の実施はもちろん、新規の研究テーマを出す必要にも迫られ、私は過去の仕事の中から、「未解決」状態のテーマを出そうかと思い始めました。
そんな時にたまたま、社外団体から研究テーマ募集企画があったのです。その企画は言わば、「研究」に対する需要と供給のバランスが崩れ、需要不足になっていたために出された、という背景がありました。
「テーマ募集をすると言っても、大学側は何でも受け入れるわけではない」とのことでしたが、「未解決」課題のひとつを出してみたところ、すぐに「本企画にぴったりのテーマ」だと回答があり、しかも、私と面識があるX教授が関心を示して下さったとのことでした。
私はX教授と連絡を取ることになり、「先生のご専門は現在脚光を浴びている○○分野ではないのですか?今回のようなトラディショナルな分野に関心を示していただけるとは意外です」と申し上げたところ、「いえ、私の研究室は、元々はこの分野だったのですよ」と笑いながら応じられ、「研究室の大学院生に、このテーマを与え、私が指導しますので仲良くやりましょう」と話が進み、共同研究は1年間を費やしてスムーズに運び、論文も無事に完了しました。研究論文は主執筆者が大学院生と私の部下、そして、X教授と私の名前も記載されるという非常に光栄な結果となりました。
成果的にはトラディショナルな分野だったこともあり、画期的ではありませんでしたが、研究所員たちはX教授と共同研究を進めることができるということ自体でモチベーションが高まるという副次効果もあり、X教授との協力関係は私が研究所を転出した後も継続しました。
大学とのマッチング成立のためにはさまざまな要件があるという主旨をこれまでも述べましたが、ここで自身の経験をもとに、改めて私なりに次のように整理してみました。
- ① 企業側で課題の特定ができていて、ある程度の整理ができている
- ② 企業側で自力解決がベストだが、他への協力要請をする意思がある(予算の確保と実施権限がある)
- ③ 大学側に課題解決に必要な見識あるいは潜在的能力のある教員が存在する
- ④ 大学側(当該教員)が協力要請に応える意思および余力(主に時間的なもの)がある
ここで、④に関しては、「大学とのマッチングにおいても、経済における『需要と供給』とよく似た関係性がある」、と表現をすることもでき、この点は公開情報だけではわかりません。企業という「需要側」が、教員という「供給側」と直接のコミュニケーションを図る必要があります。前回述べた「伝言ゲーム」が正確に遂行されても、結局は「大学の先生の意思」が最後の決め手になる、ということだと思います。そして、先生方の「意思」は打診しないことには決して分かりません。
(第4回に続きます)