【社長ブログ】ワールドシリーズの決着試合数別の確率……AIの回答は?
JOPS社長ブログ
cooperated by several associates
第13話 AIやIT技術に頼ると人間は馬鹿になるのか?
第3回 ワールドシリーズの決着試合数別の確率……AIの回答は?
今年のワールドシリーズは第7戦が延長戦になり、どちらが勝つかは最後までわからない好勝負でした。日本人が活躍していたドジャーズも、ゲレーロ・ジュニアがいるブルージェイズも、共に好きな私は、「引き分けにして両方が優勝にできないものか?」と思ったくらいでした。(笑)
さて、前回はあるAIに、「ワールドシリーズで、両チームの力が五分五分の場合、何勝何敗で決着がつく確率が一番高いか?」と聞いたところで終わりました。
聞いてみた結果AIは、7戦で4勝したチームが優勝するという理解を示した後、「2項分布と順列」を使って計算ができると述べてきたのです。
そして、その結果は下表の通りで、「4勝3敗の確率が一番高い」でした。表には前回述べた私の計算結果も記載しています。
| 決着試合数 | 勝敗数 | AIの計算による確率 | 私の計算による確率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 4試合 | 4勝0敗 | 約6.25% | 2/16=12.5% | 不一致 |
| 5試合 | 4勝1敗 | 約18.75% | 4/16=25% | 不一致 |
| 6試合 | 4勝2敗 | 約31.25% | 5/16=31.25% | 一致 |
| 7試合 | 4勝3敗 | 約43.75% | 5/16=31.25% | 不一致 |
| (参考)上記合計 | ー | 100% | 100% | ー |
上表の通り、4勝2敗の結果のみが一致していますが、他は一致していません。私の計算が間違っているのでしょうか?
どうもそうではなさそうです。
というのも、AIは上記の結果を出したのに併せて、「さらに詳しい計算を希望するか」と聞いてきたので、「はい」と答えると、今度は、「7試合で決着するには、6試合終了時点で3勝3敗である必要があり、その組み合わせは6C3=20通りある。各通りの確率は(1/2)7=1/128だから20×1/128=15.625%」と回答を示したのです。これは、AI自身が最初に答えた43.75%と一致しないため、AIが自己矛盾を起こしていることを意味しています。15.625%という値が片方のチームの優勝ケースしか考慮していないことは明白なので、試みに2倍してみても31.25%であり、やはり自己矛盾しています。
別のAIではどうかを調べるために社員に協力を依頼したところ、両チームのうちAチームが勝つ場合を想定して、私と同じ考え方をして計算結果を出してきました。
しかし、回答の途中で、
特定のチームが優勝する確率を考えます(確率は約分されているため、合計は1になりません)
という注釈がありましたが、( )内の記述は、
(確率は小数表示されているため、合計が1/2にならない場合があります)
と表現すべきであり、明らかな誤りを含んでいました。
本来、コンピュータは数的計算が得意なはずなのに、こういう凡ミスが出るのはなぜなのでしょう?
私の意見では、大規模言語データをもとに回答を生成しているからだと思います。
AIは自身が持っている膨大な量の言語データをもとに、質問の内容に続く文がどのようになるのが自然であるかという判断をもとに生成文を出してきます。そういう処理方法では、論理的な正しさに欠けるのは無理もないことだと思うのです。このあたりは、AIの開発現場でも十分に認識しているようなので、今後、AIの性能が高まってくれば、是正されると予想されますが、現状ではまだ、AIの回答文の注釈にある通り、
「AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。」
ということに留意する必要があると思うのです。
世の中では、AI活用はもはやビジネスに欠かせない、小中学生にはデジタル教科書に加えAI利用も、などと言われていますが、果たしてそれで良いのでしょうか?
(第4回に続く)