【社長ブログ】隗(かい)より始めよ
JOPS社長ブログ
cooperated by several associates
第4話 大学を「企業のトモダチ」にしたいなぁ(4回連載)
第2回 隗(かい)より始めよ
乾杯の音頭をとる企業参加者は、本会議の運営や内容に関する賛辞を述べた後、個人的な意見として、
- 本会議での発表はレベルが高くて正直なところ理解が追いつかなかった
- 発表されたような高いレベルの研究を大学と連携して実施するのは難しい
- 大学に相談事を持ち込むにも、敷居が高いと感じてしまう
というような本音を述べられることがしばしばあるのです。
乾杯の音頭のような「高い」席に登場される方は企業群の中でも地位ある方なので、前向きなスピーチをされる方が多いのは事実なのですが、本会議で発表された事例のレベルが高ければ高いほど、逆に引け目を感じてしまうのが人間というものだと思います。まして、懇親会が始まってあちこちのテーブルで個別に会話が始まると、こうした本音はかなりの頻度で聞こえてきます。

「中国の古代の役所の中。古代の中国服の官僚たちが複数いて、政策を議論している。一人が紙を手にして、もう一つの手で指さしながら話をしている。」と指示してAIに作成させました。
話は少々脱線しますが、高校時代に漢文が苦手だった私でも、「隗より始めよ」という故事成語については記憶に残っています。この言葉は「遠大な計画も、まず手近なところから着手せよ」あるいは「物事はまず言い出した者から、やり始めるべきだ」との意味で使われますが、私の記憶に強く残っているのは前者の意味のほうです。そして、今述べたような場面に出会うと、「隗より始めよ」の言葉が非常に味わい深いと感じられるのです。そのような感じ取り方は私だけではないらしく、ある連携会議体の会長は「産学連携の裾野をもっと拡げるような取組みをすべきだ」と発言されており、意図するところは同じだと私は思いました。
背景3
前回の「背景1」では経済団体が産学連携の推進に力を入れていることに触れました。経済団体は企業と大学との連携が地域経済の発展につながるとの信念のもと、団体が連携の仲介役として貢献しようと両者に働きかけをしているわけです。経済団体の代表者は自団体主催のイベントなどでは、「大学はシーズの発信に注力されており、企業は大いに参考にできる。しかし、企業のニーズに合った研究にも取り組んで頂きたい」と力説されます。一方で経済団体の産学連携担当者はニーズ探しに大変な苦労をしている。これは、矛盾しているように見えますが、個別の企業の立場からすれば、ニーズを外部に知られたくないという心理があるために、無理もない事象であると考えられます。

AIにて生成しています
また、大学に相談するため企業の担当者が慣れない大学訪問をすることには、かなりの時間や労力を費やします。産学連携担当者が仲介役をして大学に打診してくれることは助けになりますが、仲介役に力を発揮してもらうためにはまず、仲介役自身が相談内容を理解しないことには始まりません。そこでは「伝言ゲーム」のような非効率が発生する恐れがあります。
またまた脱線して個人的な話になりますが、私は前職(電力会社)を卒業した後に第二の仕事を探すため、マッチングサービスを利用した経験があり、その時に「潮力発電の案件で話を聞いてみないか」と仲介者からの打診を受けました。私は「発電では火力、水力の経験があるけれども、潮力は座学程度しかしていないが」と躊躇しましたが、仲介者からは「オンライン会議ですし、とにかく一度話を聞いてください」と勧められ、ミーティングをしてみました。話を聞いたところ、過去に学んだ知識で概ね理解はできましたが、具体的な仕事ができるほどの確信も持てず、どうしたものかと思っているうちにふっと気がつき、思わず「これは波力の話ではないか、私は火力の経験があると言ったが、あなた(仲介者)はハリョクとカリョクを混同したのでは?」と言ったところ、相手先の話のトーンが急速に減退し、結局、マッチングは不調に終わりました。
これは極端な例ですが、仲介者は多種多様な分野の話を取り扱うので、「伝言ゲーム」の落とし穴に陥ることもあるという実話です。
我々は、この「伝言ゲーム」を回避する仕組みを産学連携クロスオーバーシステム Ocket に持たせたのです。
(第3回に続きます)