【社長ブログ】若いうちに「正しい日本語」に関する本を1冊は読みましょう
JOPS社長ブログ
cooperated by several associates
第7話 あなたの評価を下げない「ビジネス用語の使い方」
第3回 若いうちに「正しい日本語」に関する本を1冊は読みましょう
「機能の種類をA、B、C、D、E、の5つとし、5機能全てを持った製品群を『広義のスマートツール』、全機能を持たずにA、B、Cの3機能を持っている製品群を『狭義のスマートツール』という定義は、『広義』と『狭義』の意味を正しく使っていない」ということを前回述べました。ではどう表現するかについては、両製品群の違いは機能の多少ですから「5機能を全て持った製品群」を「多機能スマートツール」、「全機能を持たずにA、B、Cの3機能を持っている製品群」を「少機能スマートツール」と定義すれば明確だと思います。機能の多寡を機能の高低と言い換え、「高機能スマートツール」、「低機能スマートツール」と表現する方法もあると思います。
頻繁に聞かれる言葉の誤用例を続けます。
課長が「この顧客との交渉に私が出るのは役不足です。ここは部長にお願いできませんか。」と部長にお願いする言い方は適切でしょうか?
「役不足」は歌舞伎などでランクの高い役者がさほど重要ではない役回りを演じる時に使う言葉で、この例では反対ですね。
私は過去に事務系の常務級でもこの誤用をしているのを聞きました。「私の役職位ではそのような重要な場面には荷が重い」という気持ちはわかりますが、それならそうとストレートに述べるか「私では力不足です」と述べるのが正しい使い方だと思います。
このほか、各種セミナーなどで次のような表現をしばしば耳にすることがありますので、気をつけましょう。
- 列挙する際につなぎの言葉で「あと」を頻繁に使う。・・・多数の項目を述べて、最後に軽く付加的に述べる場合の「あと」は良いと思いますが、2番目で「あと」と言われると聴衆は「あれ、もう終わりか」と思うでしょうし、「あと」が続くと「いつまで続くのか」と思うでしょう。
- 「なります」を丁寧語として使う例が最近ではかなり一般的になりましたが、しばらく前までは「コーヒーになります」などと接客係がサーブするのは「ファミコン言葉」と称され、間違った言葉の使い方だと指摘されていました。「なる」は変化を表す言葉であることを頭に入れておくのが良いと思います。
- 「させて頂きます」も丁寧なようで、何度も使われると耳障りになってしまいますし、時には慇懃無礼、強引だと受け取られる可能性もあるので気をつけたいところです。
- 「ら抜き言葉」、例えば、「見れる」、「食べれる」、「寝れる」などはスポーツや芸能でのインタビューでよく耳にしますが、字幕が出る時には、ほとんどの場合、「見られる」「食べられる」「寝られる」に修正されています。
- 「ナイーブ」は一般的な場面では「繊細」の意味で用いられますが、ビジネスでは(特に英語の場合は)、「世間知らず」、「知識不足」の意味ですので注意しましょう。
- 類似の例で、日本語のサボタージュでは一般に「怠業」の意味なのですが、ビジネス英語でサボタージュ(sabotage)が出てきたら「破壊活動」の意味だと考えるのが妥当で、日本語の印象よりかなり強烈な意味合いになります。
- 言語のダイナミズムについては、このブログで何度か話題にしましたが、一例を挙げましょう。20年ほど前にある委員会議事録で、「プロアクティブに対応する」という記述があり、わたしは「何となく前後関係から『前向きに』とか『積極的に』の意味だろうけれど、そういう単語は聞いたことがないな」と思って調べてみたところ、辞書には心理学用語として載っていましたが、あまりなじみのある訳語ではなく、ネット検索でも「ニキビの薬」としか出てきませんでした。今では「ニキビの薬」が検索上位ではあるものの「積極的」も認知されたようです。雰囲気的に分かる用語は次第に市民権を得ていくのでしょう。
- また、「サンデー兆治」で有名だった故村田兆治投手が靱帯を損傷した時には「靱帯」を「人体」の読みのように若手キャスターが読むと年配のキャスターが修正する一幕がNHKニュースで見られたのですが、大谷翔平選手の「靱帯損傷」の際には多数のキャスターが「人体」の読み方をしていて、特に訂正される気配は見られず、時代の推移を感じました。
最後の2例については少々脱線しましたが、若いうちに「正しい日本語」に関する本を2~3冊読んでおくことを社内で推奨している私でした。
(第7話おわり)