【社長ブログ】数学が得意だった学生さんとその親御さんに
JOPS社長ブログ
cooperated by several associates
第6話 大学時代に落ちこぼれだった私が『もっと早く読んでいればなぁ』と思う本
第1回 数学が得意だった学生さんとその親御さんに
今回は、「大学時代に落ちこぼれだった私が『もっと早く読んでいればなぁ』と思う本」というテーマです。
今はちょうど夏休み期間なので、JOPSでも夏期インターンシップが行われています。
学生さんたちが再来年の春の就職に向けて各企業のウェブサイト閲覧をしている中で、このブログに注目して下さることを期待しつつ、書いてみます。
「大学時代に落ちこぼれだった私」と書きましたが、その大きな理由が教養課程で大きな挫折感を味わったことでした。高校、浪人時代には数学・物理が得意だったのですが、大学では通用せず、次のような出来事が続いてTKO状態になったのです。
- 高校の数学(微分)では「dy/dxはひとつの記号であり、dyが分子、dxが分母ということではないため、割り算のような取り扱いはできない」との教えだったにもかかわらず、高木貞治著「解析概論」では割り算のような扱いを普通にしている。
- 人気のある数学系ゼミの初回講義に参加してみたところ、先生が黒板に見たこともない数式をすらすらと書き始めました。すると隣に座っていた2人組のひとりが「出ました、フーリエ展開」とつぶやき、もうひとりが「うん」と応答。私は、冷や汗が出る思いで周囲を見回すと、動揺したそぶりを見せているのは私だけでした。
- 力学の最初の講義が「ラグランジュの運動方程式」で、初めて見る記号∂が登場。講義後、生協書籍部に行って「基礎物理学選書」なる参考書シリーズの「質点系・剛体の力学」を立ち読みしてながめると、その運動方程式は10章以上ある中の最後から2番目の章に書いてあり、「何なのだ、あの先生は?」と私は驚きました。
ラグランジュの運動方程式
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さらには、同じ先生が教える電磁気学での最初の講義が「マクスウェルの方程式(微分形)」で、初めて見る記号の「rot」が登場。今回も生協書籍部で「電磁気学(I)」を立ち読みして眺めると、同方程式は続編の「電磁気学(II)」で出ており、「rot」とは「ベクトル解析」という私にとっては未知の分野の記号でした。
マクスウェルの方程式
(注)右の挿絵は最近の記載なので「∇×E」や「∇×B」と書いてありますが、以前はそれぞれ「rot E」や「rot B」と記載されていました。
これらにより私は戦意喪失状態になり、足は教室から遠のき、雀荘、体育館へ向かうことになってしまい、落ちこぼれへと転落していきました。
結局、先生は将来の後継者を探すため、意図的にいきなり難しい項目から始めたのではないかと思います。工学部に進んでから、学科で重要な事項が再度カリキュラムに登場したため、卒業できるところまではきましたが、数学・物理に対する敗北感は消え去ることはありませんでした。
就職してからは、このブログの第1話でも紹介しましたように、学生時代には手強かった事項も飯の種となるとそれなりに理解できるようになり、実務上支障のないレベルになりました。
年月が過ぎ、若い社員を指導する立場になった私はある時、若手社員に上に述べたような思い出話をしたところ、「所長(当時の私は、とある火力発電所の所長でした)、ブルーバックスのこの本が、私のゼミの仲間うちでは評判でした」と、長沼伸一郎氏の「物理数学の直感的方法」を紹介してもらいました。
この本の中に上記4に関連した「rot」の意味に関する記述がありました。長沼氏や本の推薦者の解説によれば「rot」がなぜ「回転」なのかを理解している人は少なく、多くの学生たちが撃沈される、との話が載っていました。私はまさしく撃沈されたひとりであり、長沼氏の解説を読んで、「rot」で挫折を味わう理工学系の学生は自分以外にも多数いることを知りました。そして、「誰がどの程度理解しているのかを外から知るのは難しい」という極めて重要な教訓も知ることができました。
(第2回に続きます)