社員のITスキルをどう高めるか?エンジニア不足時代に考えたいリスキリングの進め方
デジタルトランスフォーメーション(DX)や業務のデジタル化が進む中で、企業にとってIT活用の重要性はますます高まっています。
一方で、エンジニア不足は多くの企業にとって大きな課題です。特に、自社の業務を理解しながらシステムやツールの活用を進められる人材を、外部からすぐに採用することは簡単ではありません。
そこで注目されているのが、既存社員のリスキリングやリカレント教育です。
自社の業務や顧客、社内の運用を一番よく理解しているのは、やはり社内のメンバーです。そうした社員がITの基礎知識やデジタルツールの活用スキルを身につけることで、業務改善のアイデアを形にしやすくなります。
また、すべてを内製する場合だけでなく、外部のITベンダやシステム開発会社に依頼する場合にも、社内側にITを理解できる人材がいることは大きな意味を持ちます。
自社の要望を正しく伝えられる、提案内容を理解して判断できる、導入後の運用を見据えて相談できる。こうした力は、よりよいシステムづくりや業務改善につながります。
この記事では、社員のITスキルを高めることで何が変わるのか、具体的にどのような学び方があるのか、企業としてどのように進めるとよいのかを紹介します。

目次
社員のITスキルが高まると何が変わるのか
社員のITスキルが高まると、単にツールを使える人が増えるだけではありません。
業務改善やシステム導入の進め方そのものが変わります。
業務改善のアイデアを形にしやすくなる
業務をよく知る社員がITの基礎を理解すると、日々の業務の中で感じている非効率を、改善案として整理しやすくなります。
たとえば、手作業で転記している処理を自動化できないか、複数のExcelで管理している情報を一元化できないか、申請や承認の流れをシステム化できないか、といった発想が生まれやすくなります。
小さな改善であっても、現場に近いところから生まれるアイデアは、実務に合いやすい傾向があります。
ITベンダや開発会社に要望を伝えやすくなる
専門的なシステム構築を外部に依頼する場合でも、社内側にITを理解できる人材がいることは大きなメリットです。
なぜなら、要望を具体的に伝えられるようになるからです。
「使いやすいシステムにしてほしい」という抽象的な要望だけでは、開発側も具体的な仕様に落とし込みにくくなります。
一方で、業務フロー、入力項目、必要なデータ、既存システムとの連携、運用上の制約などを整理して伝えられれば、より実態に合った提案や設計につながります。
結果として、認識のズレを減らし、現場で使いやすいシステムをつくりやすくなります。
ツールの内製や簡易な自動化に取り組みやすくなる
ITスキルを持つ社員が増えると、すべてを外部に依頼しなくても、社内で対応できる範囲が広がります。
たとえば、ノーコード・ローコードツールを使った簡易な業務アプリの作成、Excelやクラウドサービスを活用したデータ整理、定型作業の自動化などは、社内で小さく始めやすい領域です。
もちろん、すべてを内製する必要はありません。
重要なのは、自社で対応できる範囲と、外部に依頼すべき範囲を見極められるようになることです。
導入後の定着や改善にもつながる
システムやツールは、導入して終わりではありません。
運用が始まると、使いにくい点や改善したい点が必ず出てきます。
社内にITを理解できる人材がいれば、現場の声を整理し、改善要望としてまとめたり、簡単な設定変更や運用見直しに対応したりしやすくなります。
そのため、ITスキルの向上は、導入前だけでなく、導入後の定着や継続的な改善にも関係します。
社員のITスキルを上げる具体的な方法
社員のITスキルを高める方法は、研修を受けることだけではありません。

現在は、オンライン学習サービスや動画、技術ブログ、セミナー、勉強会など、学習に使える情報や機会が多くあります。大切なのは、学ぶ手段を一つに絞ることではなく、目的や対象者に合わせて学び方を組み合わせることです。
また、ITスキルは知識として覚えるだけでは定着しにくいものです。実際に手を動かして試したり、理解したことを整理して人に伝えたりすることで、学びはより深まりやすくなります。
1. オンライン学習サービスや動画で基礎を学ぶ
まず取り組みやすいのは、オンライン学習サービスや動画を活用して、ITの基礎を学ぶ方法です。
たとえば、Udemyのようなオンライン学習サービスでは、ITリテラシー、プログラミング、クラウド、データ分析、AI、セキュリティなど、幅広いテーマを学ぶことができます。企業として契約し、社員教育の一環として活用することも考えられます。
また、個人で学ぶ場合は、YouTubeなどの動画コンテンツも有効です。ツールの使い方やプログラミングの基礎、クラウドサービスの操作などを、画面を見ながら学べるため、初学者でもイメージをつかみやすいというメリットがあります。
ただし、動画を見るだけでは実務に結びつきにくい場合もあります。学習後に、どの業務に活かせそうかを考える場や、簡単な演習テーマを用意しておくと、より定着しやすくなります。
2. 技術ブログや記事で情報収集する
IT分野では技術の変化が早いため、継続的に情報収集する習慣も大切です。
ZennやQiitaのようなエンジニア向けの技術ブログには、実際に試した内容、つまずいた点、具体的な実装例、ツールの比較など、現場に近い情報が多く掲載されています。
こうした記事を読むことで、研修や書籍だけでは得にくい実践的な知識に触れることができます。
ただし、技術ブログは個人の経験に基づく内容も多いため、すべてをそのまま自社に当てはめるのではなく、公式ドキュメントや社内ルールと照らし合わせて確認することも重要です。
情報収集の習慣をつけるうえでは、気になった記事をチームで共有したり、学んだ内容を社内で簡単に紹介したりする方法も効果的です。
3. セミナーや技術イベントに参加する
セミナーや勉強会、技術イベントに参加することも、ITスキルを高める方法の一つです。
IT分野では、技術者が中心となって運営している勉強会やコミュニティイベントも多くあります。最新技術の紹介、導入事例、実務での工夫、失敗談など、現場に近い情報に触れられることが特徴です。
また、こうした場は知識を得るだけでなく、ネットワーキングの機会としても活用できます。社外のエンジニアや、同じような課題を持つ企業の担当者と交流することで、自社だけでは気づきにくい視点を得られる場合があります。
企業としては、社員が外部イベントに参加しやすい環境を整えたり、参加後に学んだ内容を社内で共有する場を設けたりすると、個人の学びを組織全体に広げやすくなります。
4. 業務改善テーマとセットで学ぶ
ITスキルは、学ぶこと自体を目的にすると定着しにくくなります。
そのため、実際の業務改善テーマと結びつけて学ぶことが重要です。
たとえば、
- 申請業務を効率化したい
- Excel集計の手間を減らしたい
- 問い合わせ対応を一覧化したい
- 部門内のタスク管理を見える化したい
といった具体的なテーマを設定し、その解決に必要なITスキルを学ぶ形です。
業務課題と結びついていると、学習の目的が明確になり、実務で使うイメージも持ちやすくなります。
特に、業務をよく知る社員がITスキルを身につけると、「どこを改善すれば効果が出やすいか」を自分たちで考えやすくなります。
5. 実際に手を動かして、小さく作ってみる
ITスキルを定着させるうえで特に重要なのが、実際に手を動かすことです。
動画を見る、記事を読む、研修を受けるだけでは、分かったつもりで終わってしまうことがあります。簡単なツールや仕組みを作ってみることで、初めて理解できることも少なくありません。
たとえば、
- 簡単な業務アプリを作る
- Excel作業を自動化してみる
- 社内データを使ってグラフを作る
- 問い合わせ管理の一覧を作る
- 小さなWebページやフォームを作る
といった取り組みが考えられます。
大きな成果物を作る必要はありません。まずは小さく試し、「自分で作ってみた」「業務に使ってみた」という経験を積むことが重要です。
ノーコード・ローコードツールを活用すれば、専門的なプログラミング経験がなくても、申請フォームや案件管理、問い合わせ管理、簡易なデータベースなどを作成できる場合があります。
ただし、自由に作りすぎると管理が難しくなることもあります。利用ルールや権限管理、運用担当を決めながら進めることが大切です。
6. 学んだ内容を整理して、人に伝える
アウトプットは、実際にものを作ることだけではありません。
学んだ内容を整理し、ブログや社内発表、勉強会などで他者に伝えることも、理解を深めるうえで有効です。
人に説明しようとすると、自分が理解できている部分と、あいまいなままになっている部分が見えやすくなります。分かりやすく伝えるためには、内容を整理し直し、背景や手順、注意点を自分の言葉で説明する必要があるためです。
たとえば、
- 学んだ内容を社内向けにまとめる
- 技術ブログや社内ナレッジに記事を書く
- チーム内でミニ勉強会を開く
- 試してみたツールや手順を共有する
- 失敗した点やつまずいた点も含めて共有する
といった方法があります。
社内で発表する機会をつくると、個人の学びを組織全体の知識として蓄積しやすくなります。学んだ人だけで終わらせず、周囲に共有することで、チーム全体のITリテラシー向上にもつながります。
7. 要件整理の練習をする
ITスキルというと、ツール操作やプログラミングをイメージしがちですが、実際のシステム導入では「要件を整理する力」も重要です。
自社でシステムを作る場合でも、外部に開発を依頼する場合でも、何を実現したいのかを整理できなければ、よい仕組みにはつながりにくくなります。
たとえば、
- 現在の業務フローはどうなっているか
- どこに時間がかかっているか
- どの情報を入力・確認しているか
- どの作業を自動化したいか
- どこまでをシステム化し、どこは人が判断するか
- 導入後は誰が運用するか
といった点を整理する練習です。
これは、IT部門だけでなく、業務をよく知る社員だからこそ取り組みやすい領域です。
要件整理の力が高まると、外部のITベンダやシステム開発会社に依頼する際にも、自社の要望をより正確に伝えやすくなります。
8. 学習後に相談・レビューできる場をつくる
社員のITスキルは、研修を受けただけではなかなか定着しません。
実際に業務で使おうとすると、分からないことや判断に迷うことが出てきます。
そのため、学習後に相談できる場を用意することが重要です。
たとえば、
- 作成した業務アプリをレビューする
- 要件整理の内容を確認する
- 改善テーマの優先順位を一緒に考える
- セキュリティ面の注意点を確認する
- 外部ベンダに相談する前に内容を整理する
といった支援があると、学んだことを実務に活かしやすくなります。
社内だけで対応が難しい場合は、外部の専門家に伴走してもらう方法もあります。
学習テーマは対象者ごとに分けて考える
社員のITスキルアップを進めるときは、全員に同じ内容を学んでもらうのではなく、対象者や役割に応じて学習テーマを分けると整理しやすくなります。
必要な知識やスキルは、立場や業務内容によって異なるためです。

全社員向け:ITリテラシーとセキュリティ
全社員に必要なのは、日常業務でITを安全に使うための基本知識です。
たとえば、クラウドサービスの使い方、アカウント管理、情報共有のルール、パスワード管理、多要素認証、メールの扱いなどが該当します。
ここを底上げすることで、社内全体のIT活用やセキュリティ意識が高まりやすくなります。
業務改善担当者向け:要件整理とツール活用
業務改善を担う社員には、業務フローの整理や課題の洗い出し、ノーコード・ローコードツールの活用、データ整理などのスキルが役立ちます。
現場の困りごとを具体化し、小さな改善につなげる役割を担いやすくなります。
特に、部門内の業務をよく理解している社員がこうしたスキルを身につけると、現場に合った改善案を出しやすくなります。
情報システム担当者・内製化担当者向け:より専門的な技術
情報システム担当者や、将来的に内製化を担う人材には、より専門的な技術スキルが必要になります。
たとえば、プログラミング、クラウド、データベース、API連携、セキュリティ設計、運用保守などです。
この層を育成できると、社内で対応できる範囲が広がるだけでなく、外部パートナーに依頼する場合でも、技術的な判断や調整をしやすくなります。
管理職・経営層向け:IT投資と判断の視点
管理職や経営層には、細かな技術スキルよりも、IT投資や業務改善を判断するための視点が重要です。
たとえば、どの業務から改善すべきか、内製と外注をどう切り分けるか、セキュリティや運用リスクをどう見るか、投資対効果をどう判断するかといった観点です。
現場任せやベンダ任せにしないためにも、意思決定層がIT活用の基本を理解しておくことは大切です。
リスキリングを進めるときに整理したいポイント
社員のITスキルアップを進める際には、単に研修を受けるだけで終わらせないことが大切です。
重要なのは、学んだことを業務にどう活かすかです。
1. 誰に、どのレベルのスキルを身につけてもらうか
全社員が同じレベルのITスキルを身につける必要はありません。
経営層、管理職、業務担当者、情報システム担当者、将来的に内製化を担う人材では、必要な知識や深さが異なります。
そのため、まずは対象者ごとに、どのレベルのスキルを目指すのかを整理することが重要です。
2. 何の業務課題に活かすのか
リスキリングは、学ぶこと自体が目的になると続きにくくなります。
「この業務を改善したい」「この作業を自動化したい」「このデータを見える化したい」といった具体的な業務課題と結びつけることで、学習の目的が明確になります。
また、業務課題と結びついているほうが、学んだ内容を実務で使いやすくなります。
3. 小さく試せるテーマを用意する
研修で学んだことを定着させるには、実際に手を動かす機会が必要です。
いきなり大きなシステムを作るのではなく、小さな改善テーマから始めると取り組みやすくなります。
小さく試すことで、学習効果を確認しやすく、成功体験も生まれやすくなります。
4. 学習後のフォロー体制を用意する
ITスキルの習得は、一度の研修だけで完結するものではありません。
実務で使おうとすると、分からないことやつまずく点が出てきます。
そのため、学習後に相談できる相手や、レビューしてもらえる場、改善案を共有できる仕組みを用意しておくことが大切です。
JOPSが支援できること
社員のITスキルアップやリスキリングを進めるには、単に知識を教えるだけでなく、自社の業務や課題にどう結びつけるかが重要です。
JOPSでは、社員の多くがITエンジニアとして業務に携わっており、文系出身の社員を含めて、未経験からエンジニアを育成してきたノウハウがあります。
そのため、専門的な技術を分かりやすく伝えるだけでなく、学ぶ人の現在の理解度や業務内容に合わせて、段階的にスキルアップを支援できます。
たとえば、ITの基礎知識、業務改善の考え方、要件整理、ノーコード・ローコード活用、データ活用、セキュリティ、クラウド、AIなど、目的に応じたテーマで支援することが可能です。
また、最新の技術トレンドについても、自社業務にどう関係するのかという視点で紹介できます。
重要なのは、流行の技術を知ることだけではありません。
自社の業務に活かせるか、どのように取り入れると現実的か、どこまで社内で対応し、どこから外部に相談すべきかを考えられるようになることです。
JOPSでは、学習だけで終わらず、実際の業務改善やシステム導入の検討につながるよう、現場の課題整理から実践までを見据えた支援ができます。
まとめ
エンジニア不足が続く中で、IT人材を外部から採用するだけでなく、既存社員のITスキルを高めることは、企業にとって重要な選択肢になっています。
自社の業務をよく理解している社員がITの基礎を身につけることで、業務改善のアイデアを形にしやすくなります。
また、外部のITベンダやシステム開発会社に依頼する場合でも、要望を正しく伝え、提案内容を理解し、導入後の運用まで見据えて判断しやすくなります。
社員のITスキルアップは、すべてを内製するためだけのものではありません。
自社で考えられる範囲を広げ、外部パートナーともよりよく協力するための土台になります。
まずは、自社の中でどのような人材に、どのようなスキルを身につけてもらうとよいのかを整理することから始めるのが現実的です。
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